
ここでは、豊胸手術(シリコンバッグ・ヒアルロン酸・アクアフィリング・脂肪注入)を検討されている方に知って頂きたい“豊胸手術のよくある失敗”を5つにまとめました。THE CLINIC の他院修正外来にいらしたゲストの写真から、その症状と失敗の原因に迫ります。豊胸手術に失敗しないためにも、検討材料のひとつにしてみてください。
目次
豊胸手術のよくある失敗1:胸を触ると硬い
シリコンバッグ豊胸やヒアルロン酸豊胸、アクアフィリング豊胸、脂肪注入豊胸のいずれもで起こり得る失敗です。胸があまりにも硬くなり、「パートナーにバレないか不安……」と悩まれる方も少なくありません。
なかには胸に硬さを感じるだけでなく、変形や痛みを伴うケースも。左右差などのトラブルに繋がる可能性もあるため、放置は極めて危険と言えます。
シリコンバッグ豊胸で硬さを感じるのはなぜ?
バストをできるだけ大きくしたいという方の中には、シリコンバッグ豊胸を選択する方が沢山いらっしゃると思います。そんなシリコンバッグ豊胸で胸に硬さを感じてしまうのはなぜでしょう。
原因はカプセル拘縮
シリコンバッグ豊胸で胸が硬くなる原因として考えられるのが、カプセル拘縮です。カプセル拘縮は、被膜(バッグを包み込むように形成される膜)が必要以上に厚くなり、シリコンバッグを強く締め付けることで起こります。つまり、厚くなった被膜が触感の邪魔をしているのです。
カプセル拘縮を放置すると「石灰化」を起こす
カプセル拘縮を放置すると、石灰化を起こす可能性が高まります。石灰化とは、被膜の周りにカルシウムの結晶が沈着すること。この現象が強く出ると、さらに硬くなります。シリコンバッグ豊胸から10年もすると、高い確率で発症すると言われているトラブルです。
ヒアルロン酸豊胸で硬さを感じるのはなぜ?
ヒアルロン酸豊胸=柔らかいバストになれるというイメージが強いかもしれません。しかし、実際には硬くなったという失敗相談が後を絶たないのです。その原因には、以下の3つが考えられます。
原因【1】ヒアルロン酸の性質
実は、柔らかいのは顔の細かい部分に用いるヒアルロン酸に限った話です。豊胸用のヒアルロン酸は持続性を高めるため、粒子が大きくて粗いものを使用します。粒子が大きいほど持続性があるものの、その分触感が硬くなるということです。
原因【2】注入量・注入箇所
注入箇所によっては一層硬くなることも考えられます。通常、ヒアルロン酸が注入される層は乳腺下と大胸筋下。しかし、皮下に注入した場合はバストの表面から触れるため、硬さが強調されてしまうのです。
なお、大胸筋内や乳腺内へのヒアルロン酸注入は炎症を起こしやすく、しこりの原因にもなり得ます。
原因【3】元々のバストが小さい
元々のバストが大きく脂肪が豊富な方は、脂肪の厚みがあるので、バスト表面の手触りの硬さが緩和されます。しかし、脂肪量が少なくバストが小さい方はその逆で、注入したヒアルロン酸の硬さがダイレクトに手で感じられることになります。
脂肪注入豊胸で硬さを感じるのはなぜ?
脂肪注入豊胸では、自身から採取した脂肪を活用します。注入物である脂肪自体は硬くないのに、なぜ硬さを感じるという失敗が起こってしまうのでしょう。
脂肪注入豊胸で硬くなる原因は、しこり
脂肪注入豊胸によってバストが硬くなるのは、しこりが生じている可能性が高いでしょう。そもそも、脂肪注入豊胸で柔らかく、自然な仕上がりを実現する(言わばしこりを作らない方法)には①不純物が含まれない脂肪を注入する、②注入量を見極める、③あらゆる層に分散して注入するといった条件を満たす必要があります。これがひとつでも欠けるとバストにしこりが生じ、硬くなってしまうのです。
豊胸手術のよくある失敗2:しこりができた
しこりは、ヒアルロン酸やアクアフィリング(アクアリフト)、脂肪注入と言った注入による豊胸手術で起こる失敗です。ほとんどの方がバストを触ったときに「硬い塊のようなもの」を感じることで自覚されます。
また、バストがくぼんだり、引きつれを起こしたりするのも症状のひとつ。「痛みはないから」「小さいから」と、しこりの症状を安易に捉えている方も少なくないのですが、それは大きな間違いと言えるでしょう。
ヒアルロン酸豊胸でしこりを生じる原因は、塊の注入と体質
バストにヒアルロン酸を注入すると、体はそれを異物ととらえて被膜を作り、ヒアルロン酸を閉じ込めようとします。これは正常な反応で、たいていの場合は被膜が薄いうちに体内の酵素で分解されるので問題ありません。
しかし、ヒアルロン酸を塊で注入したり、体質によって強い拒絶反応が出たりすると、通常よりも被膜が厚くなってしまいます。そうなると体内の酵素でヒアルロン酸を上手く分解しきれません。厚い被膜に包まれたヒアルロン酸が吸収されず、しこりとして残ってしまうのです。
アクアフィリング豊胸でしこりを生じる原因は、未だ不明確
アクアフィリング豊胸でしこりが生じる原因は、未だにハッキリと分かっていません。考えられるのはヒアルロン酸同様、塊での注入や拒絶反応によって吸収されなかった注入物がしこりとして残ってしまうケースです。
そもそも「アクアフィリングが体内で自然吸収されるのか」といった点には大きな疑問が残ります。詳しくは、以前の記事「アクアフィリング豊胸後のしこりが溶けない? 実例に見る除去外来」をご覧ください。
脂肪注入豊胸でしこりを生じるのはなぜ?
脂肪注入豊胸のしこりの正体は、壊死した脂肪です。脂肪が壊死する原因として以下の3つが考えられます。
原因【1】脂肪の質
注入脂肪の中に死活・老化細胞などの不純物が含まれていると、脂肪は壊死します。理由は、不純物が酸素や血液の循環を妨げてしまい、脂肪に十分な栄養が行き渡らなくなってしまうからです。
原因【2】注入量が多い
1度の施術における脂肪の注入量は、片胸250cc程度が限度と言われています。それ以上の脂肪を注入するとバスト内の内圧が高まり、脂肪はすし詰め状態になってしまうのです。そうなると脂肪は呼吸ができず、塊で壊死してしまいます。
原因【3】ドクターの注入技術が低い
脂肪の質や量を守ったとしても、ドクターの注入技術がなければ意味がありません。たとえば、注入の限度量を知らないドクターが、1箇所にまとめて脂肪を注入したとすると、バスト内で脂肪が大きな塊になって栄養が行き届かず、しこりになってしまいます。
本来はしこりができないよう、皮下や乳腺下、大胸筋内、大胸筋下といった層に少量ずつ分散して注入すべきなのです。
豊胸手術のよくある失敗3:左右差が生じた
シリコンバッグ豊胸後、バストの左右差に悩まされる方も少なくありません。シリコンバッグ豊胸ほど多くはありませんが、原因によってはヒアルロン酸豊胸や脂肪注入豊胸でも起こり得る失敗トラブルです。
バストの大きさに左右差が生じるのはもちろん、アンダーバストや乳頭の位置が左右で異なるといった症状が現れ、明らかに不自然な見た目になってしまいます。
シリコンバッグ豊胸で左右差が生じる原因は、バッグ破損
この失敗は、シリコンバッグが破損している可能性が高いと言えます。例えば、バッグの中が液状の生理食塩水バッグ。これは破損すると中身が漏れ出し、片方の胸だけ小さくなることがあります。時にはその漏れ出した液で炎症を起こし、破損した方の胸だけが大きく腫れ上がるという、逆のケースもあります。
また、カプセル拘縮や石灰化でもいびつな胸の左右差を確認しています。シリコンバッグ豊胸後の左右差には、様々なトラブルが隠れているとお考えください。
ヒアルロン酸豊胸で左右差が生じる原因は、注入箇所・注入量・しこり
ヒアルロン酸豊胸や脂肪注入豊胸によってバストに左右差が生じるのは、注入箇所や注入量が原因と考えられます。これらは、ドクターの注入技術に左右されると言っても過言ではありません。なぜなら、正しい注入量や注入箇所を知らないドクターがヒアルロン酸を注入すると、片側だけが早く吸収され、バストに左右差が生じてしまう可能性があるからです。
脂肪注入豊胸で左右差が生じる原因は、注入箇所・注入量・しこり
脂肪注入豊胸はヒアルロン酸豊胸と同じく、注入箇所や注入量、しこりによって左右差が生じます。定着するはずの脂肪が片側だけ吸収されると、左右差が生じるでしょう。高い注入技術を持って行わなければ、左右差にとどまらず、しこりなどの失敗トラブルにも繋がるでしょう。
豊胸手術のよくある失敗4:バッグが破損した
自分でシリコンバッグの破損に気付く方はあまりいません。胸の硬さや変形、痛みといった症状を訴えて来院され、そこで破損が発覚するケースがほとんどです。シリコンバッグ破損の大きな原因は、劣化。つまり、シリコンバッグの挿入年数が長ければ長いほど起こりやすいトラブルということです。
アメリカのFDA(食品医薬品局)は「豊胸インプラントの寿命は10年。11年以内には少なくとも片方が破損する」と発表しているのをご存知でしょうか。一方の日本はと言うと、豊胸インプラントの効果を「半永久」と謳うクリニックもあるようです。しかし、現実はシリコンバッグ破損のトラブル報告が絶えません。
豊胸手術のよくある失敗5:リップリング/ダブルバブル
シリコンバッグ豊胸後、バストに不自然な筋ができたり、一部が突起したりすることがあ
ります。この症状が「リップリング」。折れ曲がったシリコンバッグが押し出されて痛みを感じたり、触ると“ペコペコ”という妙な感触を伴ったりもします。
また、リップリングと似ている症状が、バストに段差ができる「ダブルバブル」。どちらもシリコンバッグ豊胸後の初期段階で起こるトラブルです。これらは見た目に大きく影響するため、自覚をした方のほとんどはすぐに除去を希望されます。
リップリング(筋)が生じるのはなぜ?
シリコンバッグが折れ曲がる原因としては、以下の3つが考えられるでしょう。
原因【1】体型
体型欧米人に比べて痩せ型の多い日本人は、シリコンバッグの挿入スペースが狭くなりがち。そのため、シリコンバッグ手術時に、バッグ折れ曲がってしまうリスクが高いのです。
原因【2】ドクターの技術力
技術不足技術力の低いドクターだと、手術時にシリコンバッグがズレたまま挿入されてしまう可能性もあります。手術直後に発症しやすいのは、手術時にズレてしまっているケースが多いためです。
原因【3】シリコンバッグの種類
シリコンバッグ豊胸の手術からしばらくして起こったリップリングは、胸の中で動いたと考えられます。これは、表面がツルツルした「スムースタイプ」のシリコンバッグに多いトラブルです。
ダブルバブル(段差)が生じるのはなぜ?
ダブルバブルとは、鏡餅のように豊胸シリコンバッグの縁が段差になって表れる症状です。見た目はもちろん、触り心地や揺れ方も不自然になります。
バッグのサイズ不一致や手術方法
この原因は、シリコンバッグのサイズが大き過ぎた、もしくは手術時の剥離の方法が適切でなかったことが考えられます。リップリングと同様、挿入直後に発症しやすいのはこれが理由です。また、カプセル拘縮によるシリコンバッグの変形で段差が生じることもあります。
豊胸手術で失敗を避けることはできないのか?
どの豊胸手術においても、失敗リスクは付き物ということがお分かり頂けたでしょうか。ただ、性質上避けられないものと技術次第で避けられるものがあります。例えば、人工物を使った豊胸(シリコンバッグ・アクアフィリング・ヒアルロン酸)は前者にあたります。なぜなら、拒絶反応や経年劣化と言った人工物ゆえの失敗は防ぐことができないからです。
技術次第で失敗を避けられる、後者の例は脂肪注入豊胸です。では、具体的にどんな工夫が必要なのか? 次回はこの点を詳しく説明したいと思います。
まとめ
- 豊胸手術には、失敗を回避できる手術とできない手術がある
- 人工物を使った豊胸手術は、失敗を回避できない
- 自分の脂肪を活用する脂肪注入豊胸だけ、技術次第で回避可能