
脂肪注入豊胸は、人工物を使用しない豊胸術。シリコンバッグ豊胸やヒアルロン酸豊胸とは一線を画す触感や仕上がりが期待できます。しかし一方で、ドクター技術次第でしこりができる可能性が高まる豊胸術でもあるのです……。今回は、他院の脂肪注入豊胸の失敗相談にいらしたゲストをご紹介します。
目次
10年前の脂肪注入豊胸で失敗……両胸にできたしこり
「乳がん検診でしこりを指摘された」と、THE CLINIC に相談に来られたゲストがいました。10年前に他院で脂肪注入豊胸を受けられたそうです。超音波(エコー)検査の結果、両胸とも乳首直下に大きなしこりがあることが判明。位置と大きさは青丸で囲った部分です。
脂肪注入豊胸のしこり除去のため、やむなく乳輪を切開
THE CLINIC では、他院の脂肪注入豊胸の失敗によるしこりを多数除去しています。ほとんどの場合は、注射器で吸い取る穿刺(オイルシストの場合)かベイザー脂肪吸引で、バストにはほとんど傷をつけずに除去できます。
しかしこちらの症例は、術前のエコー検査でもこの画像のように内部まで超音波が届かないほど厚い被膜が硬く石灰化。やむなく乳輪を120°ほど切開して取り出すことになりました。
こういったケースで特に気をつけつべきことは、下記の3点です。
しこり除去の注意点1:乳腺を傷つけない
乳腺を傷つけてしまうと授乳時、乳腺炎などに悩まされる場合があります。そのため、しこり除去の術中もエコーで乳腺の位置を確認しつつ、決して傷つけないように回り込んでしこりを取り出しました。
しこり除去の注意点2:しこりを傷つけずに取り出す
脂肪注入豊胸でできたしこりの中身は、わかりやすく言えば「腐った脂肪」です。こちらが両胸から除去したしこりを切って開いた画像です。5㎝もの大きなしこりの中に、細胞膜が残った状態の壊死脂肪がぎっしり詰まっていました。
もし術中にこういったしこりがつぶれてしまうと、周辺に強い炎症が起こる可能性があるため、慎重に除去しなくてはなりません。充実性の脂肪のしこりを針で刺したり、押しつぶすなどの処置をするクリニックもあるようですが、壊死した脂肪が正常な組織に飛び散ってしまえば二次感染の危険性も伴うため、絶対に避けなければいけないのです。
しこり除去の注意点3:しっかり洗浄する
3時間に及ぶしこり除去手術で、多くの時間を割いたのが洗浄でした。特に右胸のしこりは術前からすでに体内で被膜が破れ、周辺に炎症が起こっていたため、しつこいほどに徹底洗浄し、縫合しました。
脂肪注入豊胸でしこりができてしまう原因
脂肪注入豊胸の手術でバストに注入した脂肪が問題なく定着するのは、直径2.4mmまでと言われています。それ以上の大きさになると中心部の脂肪が壊死しますが、脂肪幹細胞が多く含まれていれば、一定の割合で新しい脂肪細胞に置き換わります。しかし、限度を超える大きな塊で注入した場合、今回のような大きなしこりになってしまうのです。
そのため、細かくさまざまな層に注入する「マルチプルインジェクション」という高度な技術を持つドクターを選ぶことが、脂肪注入豊胸で失敗しないためにはとても重要になってきます。
脂肪注入豊胸のしこりを防ぐには、ドクター選びが重要
脂肪注入豊胸は、術前のバストに異常がないか、また注入後の検診でも異変やしこりがないか、エコーで確認することが欠かせません。そのため、施術を受けるクリニックにエコー検査があるかどうかの確認は必須。ホームページで「完備」と書かれていても、導入しているのは一部の院のみということもあるようです。
また、脂肪注入豊胸において「しこりはできるもの」「しこりができても大きな問題ではない」と説明し、脂肪の大量注入を行っているドクターも存在するようです。しかし、しこりができてしまうと痛みやバストの見た目に影響が生じることも。また、乳がん検査への支障も懸念されます。カウンセリングでは、しこりの予防策や万一しこりができてしまったときの対応について質問し、脂肪の加工法や注入技術まできちんと説明できるドクターを選びましょう。併せて、症例数も確認することが重要です。
まとめ
- 脂脂肪注入豊胸によるしこりで、切開して除去せざるを得ないケースも
- しこり除去時は、乳腺としこりを傷つけず、よく洗浄することが大切
- 脂肪注入豊胸で失敗しないためには、エコー設備やドクターの予防知識を事前確認